安倍晴明記こぼれ話1

 

 

毎日暑い日が続きます。そこで少し涼しくなるような話を一つ

 

釣殿ついて

 

安倍晴明記(安倍晴明物語)三 翻刻・現代語訳』(丸岡優、慧夢之㞼) 
本文45ページより

 

釣殿とは、寝殿造り、つまり平安貴族の家に設(しつら)えられていた。

中門廊(ちゅうもんろう) の先端に、池に臨んでつくられた建物で 周囲を吹放ちにした瀟洒(しょうしゃ)なもので、納涼・供宴に用いられた。

 

暑い京都にはぴったりである、今ではうらやましい建築である。

釣りが出来て涼むこともできる。

 

釣殿の例:

本文45ページに示した、土御門殿と呼ばれる藤原道長の家には東西に東釣り殿・西釣り殿の2つが造られていた。

Japaaan magazine 『紫式部日記絵巻より、土御門殿釣殿』 より 

 

https://mag.japaaan.com/archives/80366/murasaki_shikibu_nikki_emaki_fujita_art_museum_2 

本分44ページの東三条殿にも見られる。

(尚、当時の平安京の主な邸宅は本文63ページに示した)

 

現在は、越前市紫式部公園とえさし藤原の郷で見られる。

 

大きな家を持っている方は、造ってみたらどうでしょう。

(慧)

新刊でました。 New book released!

 お久しぶりです、丸岡です。

 この度、新刊「Fine Horse Stories 1: Ehon Komagatake English translation」

を出版いたしました。これは、2021年10月に出版しました「名馬物語 一: 絵本高麗嶽 現代語訳」の英語版です。

 Long time no see, I'm Suguru Maruoka.

We published a new book, "Fine Horse Stories 1: Ehon Komagatake English translation" recently. It is an English translation of  "名馬物語 一: 絵本高麗嶽 現代語訳".

        

       https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0BTZ7SFCT

 英語版の本は2020年8月に出版しました「Naganuma Ryu Troop Movement Training Manual: An Edo Period Samurai Military Arts and Sciences Textbook」に引き続き、2冊目となります。

 Our first English book was "Naganuma Ryu Troop Movement Training Manual: An Edo Period Samurai Military Arts and Sciences Textbook" in August 2020. This time we released the second book.

 今回、特別に少しだけ中身をご紹介します。以下は平安時代末期から鎌倉時代初期の武将、畠山重忠とその愛馬、白浪です。力持ちで知られる彼は、源平の戦いの一つ、一の谷の戦いで白浪を担いで谷を降りたとの逸話があります。

 Only in this blog, we introduce some contents about Hatakeyama Shigetada and his favorite horse, Shiranami. He was a samurai from late Heian to early Kamakura period and famous for his strength. During Battle of Ichi-no-Tani, which was one of the Genpei wars, there was an anecdote that Shigetada walked down on the steep path with his horse on the back .

 他にも源満仲の驄⿓や源義家の源太⿊、関羽赤兎馬項羽の騅といった日本や中国の武将と彼らの名馬の逸話が紹介されています。特に最後の騅の話は、驚きと涙を誘うものがあります。是非、本編をお読みください!

 There are other stories of Soryu with Minamoto no Manju, Genda-guro with Minamoto no Yoshiie, Sekitoba with Guan Yu and Zhui with Xiang Yu in this book. Especially the last episode of Zhui, you will be surprized and moved at its behavior. Please read and enjoy the book!



 

秋月夜

想夫恋の琴の音にひかれて仲国は進む
 
かつて奏じた懐かしい音色に、横笛の音色を合わせる
 
大内白も心穏やかに走る
 
嵯峨野の満月の夜
 
恋物語が語られていく
 
慧夢之㞼
 
平家物語 「小督」より 想夫恋(そうぶれん)

筑波大学附属図書館 『絵本高麗嶽』より
新日本古典籍総合データベース (nijl.ac.jp)

 

これは最近発刊しました名馬物語 二の1シーンです。
 
 
 

安倍晴明記のペーパーバック本ができました!

 お久しぶりです、丸岡です。
 おかげさまで皆さんに人気の『安倍晴明記 一 翻刻・現代語訳』がペーパーバックとなりました!

表紙

安倍晴明記(安倍晴明物語) 一 翻刻・現代語訳 | 慧 夢之㞼, 丸岡 優 |本 | 通販 | Amazon

 今まで紙の本はないですか?とお問い合わせが多く、今回そのご要望にお応えして、ようやく紙の本として世に出しました。実際に手に取ってみると、感動…です!

原文

翻刻、現代語訳、語句解説


 また、今回の出版に合わせて、囲碁の中手、コウの説明も図解で補充しました。既に電子書籍をお持ちの方は、データを更新して頂いて、お読みくださいませ。

 今後、第二、第三巻もペーパーバックとして出版する予定です。電子書籍でご存じの方も多いと思いますが、語句説明は現地で撮影した写真を使うなど、益々詳しく書いておりますので、ご期待ください。

 最後に、色々と諸事情により執筆活動が停滞しておりましたが、徐々に進めておりますので、どうぞ首を長くしてお待ちいただきたいと思います…!それではまた!

 

新刊「大坪本流 絵入 武馬必用 二 翻刻版」のお知らせ

 皆さん、お久しぶりです。丸岡です。この6月末に『大坪本流 絵入 武馬必用 二 翻刻版』をとうとう出版いたしました。

大坪本流 絵入 武馬必用 二 翻刻

Amazon.co.jp: 大坪本流 絵入 武馬必用 二: 翻刻版 eBook : 丸岡 優, 慧 夢之㞼: 本

 

 第1巻から2年もお待たせしてしまい、申し訳ございません。この第2巻は全5巻のうち一番分量が多く、専門用語を調べるのにも多くの時間を要しました。ものによってはどう頑張っても見つからないものもありましたので、今後、大坪流や大坪本流関係の資料をもっと読み解いていくうちに、追記更新していきたいと思います。

 本書の詳しい解説はAmazonのリンク先をご参照頂くとして、気になる中身を一部、サンプルでは見られない部分をお見せしてしまいます。それが以下です。

朝鮮曲馬の一部

 朝鮮曲馬、このパートが今回一番心を砕いたところになります。様々な史料を渉猟して、色々な画像を比較できるように集めました。
 馬の上で立ったり逆立ちしたり、鞍の上をぴょんぴょん左右に飛んだりと、とても自由にやっています。同じ技でも画像によって違って描かれているので、途中の動作やバリエーションが良くわかります。残り2ページ、さらに信じられない技が続きますので、ぜひ本編でお楽しみください。

 また余談ですが、この朝鮮曲馬に非常によく似たものが日本にもあり、京都、藤森神社の駈馬(かけうま)神事として残っています。この5月5日に現場で観ましたが、テレビとは迫力が違います。馬の迫り来る振動や地響き、その中であんな奇抜な曲芸をやってのけるとは…。この一見可愛らしい画像に描かれているものは、実はあの恐ろしさを克服した上に成り立つ技術だったのだ、と思わされます。
 当時、著者である斎藤定易さんが、朝鮮曲馬に舌を巻いて馬上才(ばじょうさい:朝鮮曲馬を行う技術を持った乗り手)と対談して、その教えを乞うたというのも頷けます。

 さて、ご興味を持って頂けたでしょうか。なかなか馬(マ)ニアックな世界ですが、これに共感して頂ける方には、かなり響く本になっていると思います。また、あの犬公方、徳川綱吉将軍についても、斎藤さんからの視点で評されています。

 それでは私どもはこれから、名馬物語(英語版)の最終チェックと、名馬物語(日本語版)の続編に入ってまいります。またお会いしましょう!

摩耶夫人の五種の夢:『摩訶摩耶経』

こんにちは。丸岡です。『安倍晴明記三』で掲載しきれなかったコンテンツを少しずつご紹介したいと思います。本日は、釈尊の母、摩耶夫人が見た5つの夢についてです。『摩訶摩耶経』と『仏母経』で描写されていますが、『摩訶摩耶経』の該当部分をご紹介します。

 

〔原文〕

又於其夜得五大惡夢。一夢須彌山崩四海水竭。二夢有諸羅刹。手執利刀競挑一切衆生之眼。時有黒風吹。諸羅刹皆悉奔馳歸於雪山。三夢欲色界諸天忽失寶冠。自絶瓔珞不安本座。身無光明猶如聚墨。四夢如意珠王在高幢上。恒雨珍寶周給一切。有四毒龍口中吐火。吹倒彼幢吸如意珠。猛疾惡風吹沒深淵。五夢有五師子從空來下。嚙摩訶摩耶乳入於左脇。身心疼痛如被刀劍。

 

〔書き下し文〕

又其の夜に五大惡夢を得(う)。一の夢は須彌山崩れ四海の水竭(つ)き、二の夢は諸羅刹有り、手に利刀を執り一切衆生之眼を競挑す。時に黒風吹く有りて、諸羅刹皆悉(ことごと)く奔馳(ほんち)し雪(せつ)山(せん)に歸(き)す。三の夢は欲色界の諸天忽(たちま)ち寶冠を失(しつ)す。自(おのづか)ら瓔珞(やうらく)絶(た)へ本座に安んぜず、身に光明無く猶ほ聚(じゆ)墨(もく)の如し。四の夢は如意珠王(によいしゆわう)高く幢上(どうじやう)に在り、恒(つね)に珍寶雨(ふ)り周(あまね)く一切に給ふ。四つの毒龍有りて口中より火を吐き、彼(か)の幢を吹き倒し、如意珠を吸ふ。猛疾惡風は吹きて深淵に沒す。五の夢は五つの師子有りて空從(よ)り來下し、摩訶摩耶の乳を嚙み左脇に入(い)る。身心疼痛し刀劍を被(かうむ)る如し。

 

競挑:佛學大辭典には「競排」とある。「競ひて一切衆生之眼を排す」と訓じるか。

「维基文庫 佛學大辭典/摩耶夫人五夢」より

https://zh.wikisource.org/wiki/%E4%BD%9B%E5%AD%B8%E5%A4%A7%E8%BE%AD%E5%85%B8/%E6%91%A9%E8%80%B6%E5%A4%AB%E4%BA%BA%E4%BA%94%E5%A4%A2

瓔珞:インドの民族で、珠玉や貴金属を綴り頭・首・胸にかける装身具。のちに、仏菩薩などの身を飾るものとして用いるようになり、寺院内でも天蓋などの装飾に用いる。

如意珠王:如意珠は梵語チンター・マニ(cintā-mai)の漢訳。如意宝珠、無価宝珠、摩尼宝珠ともいい意のままに宝や衣服、食物を出す徳をもつ宝珠のこと。あらゆる宝石の王である如意珠。

:はた。経文を書いた布、または経文を彫った石柱。

 

〔意訳〕

「大智寺だより 平成三〇年如月 Vol.92」https://www.daichiji.com/okusan/pdffile/pdf201802.pdf

をご参照ください。

新刊出ました! 『安倍晴明記(安倍晴明物語)三 翻刻・現代語訳』『名馬物語 一  絵本高麗嶽 現代語訳』

 お久しぶりです。丸岡です。

この度、安倍晴明記(安倍晴明物語)三 翻刻・現代語訳』を発刊いたしました。第二巻から数えてほぼ11か月ぶりとなりまして、大変お待たせいたしました。

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実に長い戦いでした。

 今回は第2巻までの話の続きと、その他のお話のオムニバス形式になっており、より気軽に読めると思います。また今回からはタイトルに「翻刻」と付けましたが、これまでと同様に、納得するまで翻刻してきました。

参考史料に関しても、例えば表紙にある、鉄輪を被った鬼女の話では、普段は見過ごされがちな数々の明王や神々の図像も豊富に掲載しました。今まで類書を読まれた方もきっとご満足頂けるのではないでしょうか。皆様のご感想お待ちしております。

 

 また、昨年の10月には『名馬物語 一  絵本高麗嶽 現代語訳』も発刊しておりましたが、ブログでお知らせできておりませんでしたので、この場でご紹介させて頂きます。

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この本(第一巻)では、5頭の馬を紹介しており、驄龍(源満仲)、赤兎馬関羽)、源太黒(源義家)、一名白浪(畠山重忠)、騅(項羽)となっております。

 「三国志平家物語、きちんと読まないとな…でも時間がないし...」と感じておられる方々には、うってつけかもしれません!(笑) 私自身もこの古文書翻刻プロジェクトを通して、多くの古典を研究する機会が得られ、大変勉強になっております。

 

 今回、『安倍晴明記』は一段落しましたが、出版直前で参考資料の研究に燃えてしまった『大坪本流 武馬必用』の続編や、英訳中の『絵本高麗嶽』、その他多くの本も順次出版して参りますので、またどうぞよろしくお願い致します。