易経書経講義 周書 金滕 その2

こんにちは。丸岡優です。

本日も続きの大意を掲載したいと思います。

 

 周公は、二公(太公、召公)が、武王の為に、穆卜せんとするに因り、すなはち先王を戚(いた)ましむることに、托して、これを止めんとし曰ふ、未だ武王の疾を以て、先王の尊霊を、憂悩せしむべからず、となり。」その意、父母の心は、常に子孫の疾病を以て、憂と為すものなり。然るを、今武王の為に、穆卜するは、必ず先王の宗廟に於いて、これを行ふべし。然るときは、先王の霊、これに因つて、遂に憂慮を懐かれんことを恐る。故に、姑(しばら)くこれを止むるに若かずと。

 

宗廟:中国において、氏族が先祖に対する祭祀を行う廟。

 

 周公旦は、二公(太公望と召公奭)が、武王のために占いをしようとするので、これを止めさせようとして言いました。

「今はまだ、武王の病気のことで、先王の尊霊を心配させるべきではない。」

その意図は、「父母は常に子孫の病気で心配してしまうものであり、今武王の占いをするとなると、必ず先王の宗廟で行うことになる。つまり周公旦は、先祖に思い煩いをさせたくないので、しばらくは止めておいた方が良い」ということでした。

 

 これ、周公は、身自ら、祷(いの)りて為さんと思ふ。故に托して二公に同意せざりしならん。然るに、周公は、三王に祈つて、身を以て、武王の死に、代はらんと請へる。これ、その先王を憂悩すること、穆卜よりも甚だし。これを以て見れば、周公の言、前後揃はざるが如し。蓋(けだ)し、意(おも)ふに、周公聖明の資を以て、幽明の理を洞見し、武王の疾、至つて危ふきを見る。故に、今穆卜しては、その凶兆を得んこと、十に八九なるべし。果たして然らば、天下未だ安からざるに、凶兆を得て、百官、庶士、武王の命、朝夕に在りと知らば、変の起こらんこと、測り難し。これ、国初の至つて、大切の場所なれば、わざと、この詞を以て、二公が、穆卜の評議を、うち消されたるなるべし。

 

 しかし、実際は周公旦自身で祈りを捧げようと思っていて、二公に同意しなかったのでしょう。そして周公旦は、三王に祈って、武王の死に代わりたいとお願いしました。

 このことは、二公の占いよりもずっと先王を心配させることになり、周公の言葉はつじつまが合わないように思えます。おそらく周公旦は、彼の素晴らしい才能により、奥深い理を見抜き、武王の病気が危険なことを悟ったのでしょう。それゆえに、ここで占いをすれば、十中八九、凶兆(不吉な結果)になり、そうなると、天下がまだ不安定なのに、凶兆で多くの役人や一般の人々が、武王の命がそう長くないと知れば、いつ反乱が起きるか見計らうことができません。この時は国の始まりの大事な時期だったので、わざと先ほどのように言って、二公の占いの進言を退けたのでしょう。